IQ って何?
IQは「Intelligence Quotient」の略で、
意味は「知能指数」です。
この名称から直感的に「IQ = 頭の良さ」と
感じる方も少なからずいらっしゃるようです。
では、本当にそうなのでしょうか?
ここではIQについて、当機構の考え方をご紹介します。
知能をどのように定義するか?
知能には様々な定義があります。広義としては知的活動に関する能力全般を指します。心理学領域では様々な分類が試みられています。「時間制限の中で図形問題にどれだけ沢山正解することができるか」、「円周率を何桁暗唱できるか」これらはともに知能の一部と捉えることが可能です。一方、知能全てを測定する方法は見つかっておらず、今後測定することも難しいでしょう。知能の出力は多岐にわたるため、その全てを定義することは現実的ではありません。ですので測定された知能の一部を、「知能の一部である」という認識のまま定義するにとどめます。
知能検査とIQ
IQは知的活動の一部を測定し、数値化したものです。それ以上でもそれ以下でもありません。「知能の一部を数値化したもの」と言い換えることが可能でしょう。また、見方を変えると「出力結果であって、知能そのものではない」とも言えます。
検査結果と相関の高い事象がある場合、検査結果はその事象に対して意味を持つことになります。IQの持つ意味は検査ごとに異なるということです。ここで注意しなければならないのは「ヒトの知能自体がIQなのではなく、知能の一部を測定した結果がIQ値だ」ということです。
頭の良さとIQ
知能(知的能力)という多面的で複雑な事象を、数値という一次元の結果で表現することは不可能といえます。IQの示す意味は検査の内容に大きく依存します。
例えば脚力を測定するとなったときに、走力、跳躍力、レッグプレスの重さ。色々と測ることができます。しかし、どれも脚力そのものではありません。知能についても同じことが言えます。現在、「頭の良さ」を直接測定する検査は存在しません。ですので 「IQ ≠頭の良さ」といえます。
しばしば勘違いしている記述を見かけますのでここで言及しますが「トレーニングによって変動することのない、生まれ持った知能を測定した数値」というものは存在しません。現実として、知能を含むあらゆる能力はトレーニングによって変動します。それを認識した上で、変動しにくい部分を出来るだけ正確に測定することが知能検査に求められます。確かに「IQ≠頭の良さ」ですが、「IQ∈頭の良さ」とは言えそうです。
IQは大きく分けて2種類!
IQには「年齢算出型IQ」と「偏差値型IQ = DIQ」が存在します。
◆「年齢算出型IQ」
「年齢算出型IQ」は「従来の知能指数(IQ)」とも呼ばれていて、精神年齢と生活年齢とを比較して算出します。
「精神年齢 ÷ 生活年齢 × 100」で計算され、年齢によっては平均値が100とならなかったり、幼少期にはIQ200のように極端に高い数値を示したりします。例えば、生活年齢(実年齢)が7歳で、検査結果が14歳の精神年齢を示していればIQは200となります。
◆「偏差値型IQ(DIQ)」
一方、「偏差値型IQ(DIQ)」は正規分布を利用して算出します。定義の正確性から現在はこちらが主流となっています。例えば、被験者のスコア(検査結果)が完全な正規分布になった場合。99.9パーセンタイル(1,000人に1人出現)がIQ146 sd15(sdについては後述)となります。50パーセンタイル(2人に1人出現)がIQ100sd15となります。
この2種類の算出方法で示されるIQは、それぞれの数値の持つ意味が全く異なるため比較できません。
当機構が実施する知能検査では「偏差値型IQ(DIQ)」を採用しています。
IQの表記法は主に3種類!
IQは表記法によって意味が大きく異なります。
よく使用されるのはsd15, sd16, sd24の3種類です。sdは「standard deviation」の略で標準偏差を表します。「s.d.」や「S.D.」単に「SD」等の表記がなされます。本節では「sd」の表記を用います。
標準偏差の説明は本節の趣旨から外れますので、簡単に例を示しておきます。
例1:「IQ130 sd15」 = 「IQ132 sd16」 = 「IQ148 sd24」これらは全て出現率 約2.3% (1/44)
例2:「IQ145 sd15」 = 「IQ148 sd16」 = 「IQ172 sd24」これらは全て出現率 約0.14% (1/741)
例から分かるように、IQはsdとセットでないと意味を成しません。
sd15は最も一般的な表記法です。sd16は使用頻度は低いものの使用されることがあります。sd24は数値が大きく出るため、メディアやマスコミなどでしばしば使用されます。
当機構が実施する知能検査ではsd15の表記法を採用しています。
レオナルド・ダヴィンチのIQは180!?
IQは検査結果から算出される数値です。ですので、当然ですが検査を受けていない人のIQは算出しようがありません。
しばしば勘違いされているのですが、「IQ〇〇(例えばIQ150sd15)の人」が初めから存在するのではなく、検査の結果から算出されたものがIQなのです。「テスト95点の人」や「偏差値60の人」が初めから存在しないのと同じです。ある検査ではIQ150sd15、別の検査ではIQ130sd15ということもあり得ます。検査の目的や内容が異なれば、結果の持つ意味も異なります。
まとめますと
・IQは検査の結果
・IQは検査内容とセット
ですので偉人のIQに意味はありません。
1926年にアメリカの心理学者Dr.Catharine Cox Milesが逸話などを基に、偉人のIQの推定を試みていますが、正確性に欠く研究であると言わざるを得ないでしょう。しかしながら、現在でもマスコミ等でしばしばこれらのIQが用いられているようです。
また、現在は統計学的な背景を持つ偏差値型IQが主流であるため、この研究で算出されたIQと比較することは意味を成しません。